◇第94回全日本フィギュアスケート選手権大会2日目◇12月20日◇国立代々木競技場第一体育館
[男子FS]
12位 片伊勢 134.76
22位 木科 108.66
24位 朝賀 104.14
[男子総合]
9位 片伊勢 213.16
22位 木科 174.82
24位 朝賀 173.62
全日本選手権大会(全日本)2日目は、男子のフリースケーティング(FS)が行われた。関大からは3名全員がショートプログラム(SP)を通過し、大舞台に挑む。それぞれの思いを胸に、心震わす全力の演技を披露。会場を埋めた大勢の観客をはじめとする、見る者全てに感動を届けた。
最初に登場したのは、今試合が引退試合となる木科雄登(M2)。名前がコールされる直前から会場中に拍手と歓声が起こる。男性ボーカルの歌声が響くと、ゆっくりと滑り始めた。冒頭のトリプルアクセルは惜しくも転倒してしまう。続くトリプルアクセル+3回転トーループも回転が抜け、シングルアクセル+2回転トーループに。それでも3回転フリップの着氷を耐え、フライングシットスピンではレベル4を獲得。柔らかく切ないメロディーに乗せて、思いのこもったコレオシークエンスを披露する。クライマックスにかけて壮大な曲調に変わると、得意とする3回転ループをきれいに着氷。さらに3回転ルッツ+ダブルアクセルと3回転トーループも決めた。徐々に力強さを増していく『Fix You』の曲調に合わせ、一瞬一瞬をかみ締めるように滑る。最後は両手を広げて演技を締めくくると、会場中から大歓声が。「終わった瞬間は絶対に泣かないと思っていたけど、気づいたら号泣していた」。スケート人生19年間の全てを込めた4分間を終えてリンクサイドに戻ると、濱田美栄コーチから花束を手渡される。「ずっとこの歓声を聞いていたいなって思うような、本当に一生忘れることのない、いい時間だった」。会場中からの大きく温かい拍手に包まれ、晴れやかな笑顔で競技人生に別れを告げた。

第1グループの最後には、朝賀俊太朗(文2)が登場。今シーズンは肋骨と脛骨の間の靭帯が切れるけがを乗り越え、全日本の舞台にたどり着いた。演じるのは、オリンピックシーズンに合わせて選んだ『トゥーランドット』。最初のトリプルアクセルはステップアウトになり、2本目も回転が抜けシングルアクセルに。それでも、一つ一つの動きを丁寧に滑っていく。3回転フリップと3回転サルコーでは転倒したものの、会場からは励ましの声と拍手が。続く3連続のコンビネーションジャンプを降り、残る2本の3回転ジャンプでも着氷をこらえる。終盤には「最後まで力を振りしぼって演技した」と渾身(こんしん)のコレオシークエンスを披露。演技後のあいさつではこの日に20歳の誕生日を迎えたことを表すパフォーマンスも。「フリーに残れたことも奇跡に近いもの。『戻ってこれたんだ』という気持ちが一番強い」と演技後には笑顔を見せる。さらに、ステップシークエンスではレベル4を獲得。これは、男子シングルで優勝を果たした鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)と朝賀の2人のみだ。これまで積み重ねた努力が花開いた結果。確かな手応えを手に、2度目の全日本を終えた。

整氷を挟み、第3グループがスタート。SP7位の片伊勢は、グループの最終滑走で登場した。『Bring Him Home』の優しく穏やかな音色が流れると、ゆっくりと両手を広げて滑り始める。冒頭のトリプルアクセル+3回転トーループを軽やかに着氷。GOE(出来栄え点)2・06の高い加点を引き出す。続くトリプルアクセルもきれいに決め、会場から拍手が鳴り響いた。3回転ループは回転が抜けたものの、3回転サルコー+2回転トーループを美しく降りる。続く3回転ルッツは惜しくも転倒したが、3回転フリップ+ダブルアクセルのコンビネーションジャンプを着氷。柔らかい曲調に合わせ、指先までしなやかに祈りを込めるようなスケーティングを披露する。FSは12位となったが、総合順位は過去最高の9位に。日本スケート連盟の強化選手への返り咲きを決めた。「頑張りたいなっていう意思は今すごくある」。未来への希望を口に、大学生最後の全日本を滑り切った。

それぞれがたくさんの思いを抱え、挑んだ今年の全日本。SP、FS共に8000人を超える観客が見つめる大舞台で、全力を出し尽くした。今大会で得たものを胸に、次はそれぞれのステージへ。氷上に描いた軌跡は、きっと未来を照らす光となる。【文:中吉由奈、川元咲季/写真:中吉由奈】
▼木科
「(花束をもらったが感慨は)演技が終わった瞬間、本当に今までで一番気持ち良かったですし、ずっとこの歓声を聞いていたいなって思うような、本当に一生忘れることのない、いい時間だったなと思います。(SP後は晴れ晴れとした表情。FS後にこうなる想像は)この曲自体、今日のアップで聞いている時も、もうすでに泣きそだったので。もうずっとこらえながらって感じでしたし、『ボレロ』が鳴って入っていった時も、すごく温かい歓声をいただいて、ずっと泣きそうだったので。最後の終わった瞬間は、絶対に泣かないと思っていたんですけど、気づいたら号泣していました。(演技を振り返って)正直あまり覚えてないんですけど、最初の2本の(トリプル)アクセルは絶対に決めたいと思っていて、逆にその2本が決まれば、あとはもうどうなってもいいかなっていうくらい自分の中では絶対跳びたいジャンプでした。6分間(練習)で調子が良かっただけに、今日の2本のアクセルっていうのは自分でもすごくびっくりしましたし、悔いが残るものにはなったんですけど、それでも最後、自分の見せたかったスケート、ステップだったりコレオは本当に気持ち良く滑れたので、満足しています。(10年連続10回目の全日本。どんな舞台だったか)本当に小さい頃から祟人くん(=無良祟人さん)の応援だったりで全日本はずっと見に来ていましたし、自分が初めて出た時は、本当に憧れの舞台だったので。初めて出た時からは毎年この場所に来ようと思えるような、すごく特別な場所で。全日本に出たいから、全日本ジュニアでは絶対に6位から落ちなかったし、シニアに上がってからもすごく大変な広島での西日本(23年)とかハイレベルな試合もあったと思うんですけど、そういうところも全部、全日本に出たいっていう、その気持ちだけでここまで10回の記録につながったと思います。それで最後は、ショートで終わらずにしっかりフリーまで滑れたっていうところは、本当にいい終わり方だったなって思います。(関わってきた方とのやり取りは)とにかく楽しんでっていうのを言ってくれたり、公式練習が終わった後は祟人くんから『リンクサイドで見守ってるから最後しっかり頑張って』っていうメッセージをもらったり、ジュニアの頃から一緒にやってきた高志郎(島田高志郎=木下グループ)からも行く前に『ほんと楽しんできて』って言ってくれましたし、本当にたくさんの方からメッセージをいただいて。この数時間後にみんなの(オリンピック)選考とかも決まると思うので、そこは最後自分自身も楽しみながら。この最後の全日本を楽しみたいと思います。(岡山への思いは)本当に自分が生まれ育った場所で、髙橋大輔さん(7年度卒)だったり、いろんな先輩方の背中を見てここまで来られました。今日も大ちゃんが見に来てくれるっていうふうに聞いていたので、あとでごあいさつにも行きたいですし。後輩の植村くん(駿=就実学園)とかもすごく頑張っていたと思うので、これからも岡山の選手を応援したいなと思います」
▼朝賀
「(演技を振り返って)悔しさの残る演技ではあったんですけど、直近の体の状態だったり、トリプルアクセルを入れてのフリーの構成っていうのは、まだまだ練習が足りてないのは事実なので、今日の演技は本当に今やっている自分の最大の演技だったのかなとは思います。(演技後に倒れ込むような仕草もあった)体力が本当に持たなくて、もう前半のアクセルで使い果たしてしまったのかなっていうのと、普段あまりミスすることのない3回転フリップでパンクをしてしまったので、ちょっと気持ち的にも動揺はありました。それでもやっぱり4分間を通して見てくださる方がいて、途中で気持ちを切らすわけにはいかなかったので、最後まで力を振りしぼって演技しました。(自分を褒めるみたいな気持ちは)今回ここの舞台にいること自体が奇跡に近い状態で、そこの中でフリーに残れたっていうのもまたさらに奇跡に近いもので。この試合に対する気持ちとして一番強かったのが『戻ってこれたんだ』っていう。上を目指そうというよりも、ここに戻ってこれた自分、頑張った自分にご褒美の舞台じゃないですけど、そういった気持ちで今回はショート、フリー共に臨んだので。そういった面で、フリーを滑り切れたことには本当によく頑張ったって言いたいと思います。(FSに残れた日が誕生日というのは)誕生日の日がフリーというのは、うれしいのか悲しいのかよく分からないんですけど。今回こういうけがの状態もあったので、ショートを通過できるか本当に緊張もあったんですけど、誕生日は絶対に滑りたいっていうのはあったので。演技はともかく、滑れて良かったと思っています。(宮原知子さん(20年度卒)の振付について、友野一希さん(第一住建グループ)がステップがとても難しいとおっしゃっていました)一希くんとはよく練習も一緒にしているんですけど、その中で始めの方は『なんだあれ』みたいにずっと言ってもらえて。一希くんのステップも相当すごいんですけど、そう言ってもらえると本当にうれしくて。自分でやっていてもなんだこれって感じなんですけど、えぐいものを作ったなと思います。(振付してもらっている時は)最初はもっとキチキチの演技で、自分からこれちょっと無理だっていうのは知子ちゃんに何回も言って、何本もステップは省いてもらって、今の形になっています。(演技後のパフォーマンスについて)今日は演技はともかく、20歳になったぞっていうのを皆さんに伝えたかったので、もうひたすら20を作っていました。昨日はこの舞台に帰ってきたぞっていうのと、たぶんここに来れるとほとんどの人が思ってなかったと思うので、そういう意味で俺が来たっていうのを伝えたくてやりました。(演技前の心境は)フリーに残れたから、もうやるだけとは思ってやっていたので、めちゃめちゃ緊張することはなかったんですけど、ただきっちりやるっていう思いはありました。(足の状態は)右足も左足もそんなに今日は痛みもなく滑れたんですけど、サルコーで回転不足でこけてしまったので、少し気になるところはありました。今のところ痛くはないので大丈夫かなと思っています。(ジャンプ以外のコレオシークエンスなどは)コレオは最後の演目なので、自分の中で出し切るっていう思いで最後にナンバーワンをしたんですけど、いつもよりかは滑れたかなと思います。(選手の方から誕生日を祝ってもらったか)アイスダンスの森田くん(森田真沙也=木下アカデミー)にキスクラで言ったぞっていうふうにさっき言われたんですけど、その時僕は見ていなくて。また後で見たいなと思っています。(残りのシーズンと来年に向けての目標)とりあえずは直近のインカレに向けて、ここからもっと詰められるところは詰めていって、その次には国スポがあるので、そこでは今日できなかったことを全て出し切れるように。あと1カ月頑張りたいと思っています。(足の関節にワイヤーを入れていることについて)もうずっと入れっぱなしでやると聞いています。硬さはだいぶ出てて、まだ一番下まで下がるっていうのは難しいんですけど。ただ、アクセルの状態がけがの前よりはいいので、何かしてくれたおかげでバランスが良くなったのかなとは思います。結構何回も捻挫しているので、足首が結構グラグラしてるんですけど、それを締める意味でもあるので、足が正常な位置に戻っているのかなとは思いますし、足を置くタイミングだったり、足の裏の感覚っていうのは前よりはあるかなと思います。(近畿を棄権したものの西日本に進出が決まった時の心境)(近畿は)出たかったのは出たかったので。立つだけでもいいと最初は言われていて、立つだけでもいいなら立とうかなと思ってたんですけど、その期間は立つこともできず。ただ、西日本には出られる判断を出してもらえたっていうのは、そんなにあることでもないと思うので素直にうれしかったです。(本田武史コーチと何を話したか)武史先生にも『出られたことがまずは良かったね』っていうのはずっと言われて、キスクラでも本当に出られたからっていうのは言われていて。僕自身もそういう思いだったので、悔しいものはあるんですけど、まだまだこれから続くので、そこで出せればと思っています」
▼片伊勢
「(演技を振り返って)まずは悔しいなというのが一番最初に来てしまうんですけど、ショートで良かった部分と、フリーで(トリプル)アクセルが入った部分、後半は失敗しながらもなんとか這いつくばったのが結果的にこの順位に留まれた要因だと思います。良かったとも思うんですけど、もっと頑張りたいと思います。(現役続行への思いは)まだまだできるだろうなって自分でも感じますし、特に今日のフリーの演技でこのままじゃ嫌だなってすごく思うので、頑張りたいなっていう意思は今すごくあります。(諦めなくなったことのきっかけは)練習からどんな状況でも粘り強さみたいなものは自分の中で意識してやるようになっていて。練習の質とか内容は昨年と比べると大きく変わったと思いますし、それが結果的に試合でも持ちこたえるというか、最低限みたいなところにはつながっていると思います。(自分自身でどんなスケーターだと感じているか)あまり自分ではすごく個性に秀でているとかそういったことは感じないんですけど、幸い周りの方にそう言っていただける機会も年々増えていて。やっぱりアスリートでスポーツで競技の面もあると思うんですけど、ショーとか、舞台を見ているような競技でもあると思うので。立ち姿とか衣装も含めて、氷の上の舞台を見ているようなものにしたいなとは常にしたいなと思います。(神戸クラブで共に練習していた坂本香織選手(シスメックス)への思いは)6分間練習が終わって靴を脱いで準備している時にかおちゃんが男子を見に来ているところで、廊下ですれ違って。『パワーちょうだい』っていってすごくパワーをもらいました。いつまでも応援していますし、あすのフリーも会場で見る予定なので、しっかりと目に焼き付けて今後のかおちゃんのスケート人生も応援したいなと思います」
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