私は小学生の頃から本の虫で、活字中毒だ。文字の世界に入ってしまえば、目を背けたくなるような出来事や、つまらないルーティンワークの現実から一瞬にして離れることができる。そんな感覚にやみつきになった。幼い私に本の世界、文字を読むことの楽しさを教えてくれたのが、『それいけズッコケ三人組』をはじめとする「ズッコケ三人組」シリーズだ。
当時から電車通学だったので近所に住んでいる友達はいなかったし、放課後に遊ぶこともなかった。家、学校、塾を行き来する毎日を過ごしていた。学校の漢字ドリルはとめ・はね・はらいのチェックが細かすぎてやり直しばかりだし、塾の勉強は難しすぎる。家に帰っても「宿題はもうやった?勉強もしなさいよ」、「部屋の片付けもしなさい」ばかりで毎日を生きるモチベーションはないに等しかった。その中で出会ったのがハチベエ、ハカセ、モーちゃんだった。彼らは、いつも放課後に集まり奇想天外なことを考え計画し、必ず実行する。やらない後悔は絶対に選ばない。それが成功することもあれば失敗に終わることもあるが、彼らはいつも楽しそうだった。私も本を読んでいる間だけは花山第二小学校6年1組の生徒だったし、ハカセ、モーちゃんと同じ市営アパートに住んでいた。その世界で過ごせるのは電車時間と休み時間だけで、1日の中でも短い時間ではあった。それでも、3人は毎日私の日常に彩りを添えてくれた。
9年前には全巻家に揃っていた「ズッコケ三人組」シリーズだが、もう今はない。母がブックオフにでも売ったのだろう。それでも私の心の中ではいつまでも3人は生き続けているし、今でもたまにストーリーを思い出して、6年1組の生徒になることもある。私が年を重ねる度に、彼らとの年齢差は開いてしまうことを少し寂しく思うときもある。そう簡単に小学生と同じ無邪気さは持てないものだ。しかし、私の「やりたいことは全部やる」のマインドは彼らによって形成され、今でもそれがモットーだ。【坂井瑠那】
コメントを送信