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目の前で後輩2人が号外づくりに夢中になっている。こんな時期もあったなぁと、カンスポとしての寿命を迎え、それを微笑ましく見守る自分。

中学時代は陸上部に所属し、駅伝で全国大会出場。高校時代は野球部に所属し、春のセンバツ(選抜高等学校野球大会)出場。大学は第一志望だった関西大学に合格した。

この経歴を知るある人から言われた、「中西の人生、順風満帆やなぁ」という他人行儀な言葉。

結果だけを見れば。うわべだけを見れば。

県大会でいつも表彰台に立つような同期や後輩に囲まれ、いつもどこか劣等感を感じていた中学時代。マネージャーの先輩がいない、選手だけでも部が成り立つ(つまり自分が必要ない)環境の中で、自ら存在価値を1から見出さなくてはいけなかった高校時代。様々な大学の野球部に見学へ行き、「ここだ!」と思った関大野球部に入部したいと見事合格したにも関わらず、入学前にその道を絶たれた大学1年の春。

万人に「ポジティブやなぁ」と言われるほど脳内お花畑の自分だが、少なからず、挫折は経験してきた。人生山あり谷ありにおける「谷」は存在した。

でも、その挫折や谷はいつも、幸せになるため、より幸せを感じるため与えられた環境だった。

関大野球部への道が閉ざされた自分に現れた新たな道。

進むとそこは、非日常体験ができる場所だった。

高校時代、テレビ越しに見ていた甲子園ボーイ。全国優勝経験のあるトップアスリート。私の知らない競技に人生を懸けて取り組む選手たち。そんなKAISERSのために大学生活の大部分をかけ、全力で広報活動に励むカンスポ局員や声援を送り続ける応援団。この道を選ばなければ絶対に出会うことのなかったそんな人たちに取材し、1対1で話ができる。挨拶を交わしたり、講義を一緒に受けたり、食事を共にしたり、チームについて語り合うことだってあった。

阪神甲子園球場のカメラマン席。明治神宮球場のグラウンド。東京オリンピック2020の会場にもなっている大井ホッケー競技場。一般人では立ち入れないような場所に足を踏み入れることができた。

幸せだった。カンスポでの3年間は、人生山あり谷ありの「山」だと断言できる。上り詰めるまでの苦労を忘れるぐらい、そこから見た景色は最高で、たくさんの人のおかげで人生の大きな財産を得ることができた。予定では今から谷へと向かっていくことになるが、またいつか新たな山頂で絶景を拝めると思うと、怖いどころか、むしろ足取りは軽くなる一方である。

最後に、3年間で1番お世話になった同期から要望があったので、恩返しも兼ねて私の大好きな、花の話をしたいと思う。

12月中旬。ソフトテニス部の取材に行った際、会場で鮮やかなピンク色の花が咲いているのを見つけた。ツバキかな、と思い近づいてみると、その木の根元には花びらが一枚ずつ落ちていた。

花好きと名乗るにはまだ数年早かった。そう思った反面、新しい花との出会いを喜んだ。

それはサザンカだった。花言葉は「困難に打ち克つ」。冬の寒さに耐えて凛と咲くそれにぴったりの花言葉だと思い、胸を打たれた。

ツバキとサザンカ。調べてみると、その違いはいくつかあった。例えば開花時期。ツバキが12~4月に咲くのに対し、サザンカは10月頃から咲き始める。また、花の散り方も異なった。ツバキは花まるごとポトリと落ち、サザンカは花弁がバラバラになってそれぞれ落ちる。それぞれの特徴、性質を知っていれば見分けることができる、というシステムらしい。

小さな違い、変化に気付く。幼いころから行ってきた間違い探しのようで、間違い探しでないそれは、実は難しかったりする。

体つきが大きくなった。髪が短くなった。目元が二重になった。顔色が悪い。ユニホームが新しくなった。ボールを追う足運びが速くなった。どこかチームの雰囲気が明るくなった。

3年間、そのチーム、その選手を見続けてきたからこそわかる、違い、変化。そこに気付いたとき、初めて自分の存在価値を見出せた気がした。誰しもができる。でも、誰もはできない。過去でも他人でも、比較するものを知らなければその気付きは不可能だからだ。変化に気付かずとも、死ぬわけではない。その反面、その発見が自分や他の誰かの人生において大きな影響を与えるかもしれない。

さて、自分はツバキだろうか、サザンカだろうか。

【中西愛】

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