◇第89回全日本フィギュアスケート選手権大会◇12月26日◇ビッグハット◇
[男子最終結果]
10位 三宅星南(情1) 213.53
14位 須本光希(政策2) 193.37
19位 本田太一(経4) 177.87
21位 木科雄登(安全1) 174.30
日本の頂点を決める運命のフリ―が行われた。昨日のショートプログラム(SP)の結果により、関大からは、4名全員がフリーに出場。選手1人1人、それぞれ思いを抱えながら夢舞台へ挑み、躍動した。
前日のSPの結果から、最初に登場したのは木科。SPでの悔しさを晴らすべく、フリーに臨んだ。冒頭のトリプルアクセル+3回転トーループを見事に着氷。流れや高さともに申し分のない質で決め、加点を得る。その勢いのまま演技を続けたかったが、その後のジャンプで回転が抜けてしまうミスが多発。また、ファーストジャンプでの着氷の乱れが影響し、セカンドジャンプにつなげられない。
焦りの色が見えた場面もあったが、終盤で何とか立て直す。「ラプソディーインブルー」の曲に合わせた大人っぽい滑りを披露。表情豊かに曲を表現し、会場からは手拍子が沸き起こった。最後まで丁寧に滑り切った木科。「昨日に引き続きいい演技ができなくて、本当に悔しいフリーになりました」。ジャンプのミスが大きく響き、点数は伸びず。大学1年目の全日本は苦い結果となった。
続いて、今季から練習拠点、コーチを変えて新たな環境で練習を積んでいる須本が登場。しかし、今季はジャンプに苦戦し、思うような結果が出せていない。不調が続く中でフリーを迎えた。最初に組み込んだのは課題のトリプルアクセル。「練習が足りなかった」。勢いよく跳び上がったものの、ここでも惜しくも転倒してしまう。しかし、続く3回転フリップ、3回転ループを軽やかに成功させ、冒頭のミスなど忘れさせるような滑りを見せる。
壮大な音楽に合わせ、持ち前の美しくダイナミックなスケーティングで魅了。また、須本の魅力がたっぷりと詰まったコレオシークエンスで会場の空気を自分のものに。だが、最後の3回転フリップでもミスは出てしまい、終了後は納得のいかない表情を浮かべた。
そして第3グループ。強豪選手たちが集う後半グループには、本田と三宅が出場。ラストイヤーの本田。「明日は何位でもいいし、何が跳べても何が跳べなくても最後まで思いっきりやらなきゃなんで。笑って終わりたい」と、幸せそうな表情でリンクへと降り立った。「さすがに2日連続で奇跡は起こらなかった」。冒頭のトリプルアクセルは転倒。それでも、決してあきらめることはない。3回転フリップ+3回転トーループを成功させ、リズムをつかむと、ジャンプを次々に決めていく。細かなミスは出てしまったものの、気持ちのこもったステップシークエンス、雄大なコレオシークエンスで会場を引き込んでいく。
優しく幸せに満ちあふれた表情で4分間を滑り終えると、会場から大きな拍手が送られた。点数こそ伸び悩んだものの、「昨日のも僕の限界ですし、今日のは今日ので僕の今の限界かなと思います」と納得のいく表情を見せた。
三宅は冒頭で大技・4回転サルコーに挑戦。果敢に挑むも、惜しくも転倒してしまう。それでも、続くトリプルアクセル+2回転トーループの難易度の高いジャンプを着氷し、流れをつかむ。ピアノ調の曲に合わせ、強弱をつけた優雅なステップシークエンスや、長い手足を生かした迫力のあるスケーティングで観客を虜(とりこ)にしていく。基礎点が1.1倍になる終盤では、質の高いジャンプを成功。
転倒や、回転が抜けてしまうなどのミスはあったが、他の要素でしっかりとカバーし、堂々とした演技を披露。「今までで一番良かったのかなと思います。点数的にもあれだけミスがあった中で自己ベストの点数を出していただけて、本当に良かった」と手ごたえを感じた。
ハイレベルな戦いが繰り広げられた全日本。最後の夢舞台を終えた本田は、「2日間の僕の演技が全てだった」と幸せそうに語った。残る3選手は、自分の武器を身に付けるべく、また練習に励む。来年はきっと、さらに成長した姿を見せてくれるはずだ。【文:竹中杏有果/写真:アフロ/JFS】
▼木科
「今日、たくさんのミスが出てしまって、昨日に引き続きいい演技ができなくて、本当に悔しいフリーになりました。序盤のアクセル、トウ(トリプルアクセル+3回転トーループ)はうまく入って、いい入りができたかなと思ったんですけど、続くフリップ、2本目のトリプルアクセルとパンクが続いてしまって、そこから後半持ち直すことができなかったというところが本当にうまくいかなくて、悔いの残る演技になりました。NHK杯と全日本とシニアの試合が続いた中で、コレオ(シークエンス)を入れたプログラムで2試合することができて、ジュニアの試合は全日本ジュニア(選手権)でひとまず終わったということで、今回はシニアの選手のつもりで戦えました。次の国体もシニアの課題なので、コレオを入れたフリーでいい演技ができたらいいなと思います。(フリーの振り付けについて)今までやったことのなかった動きをやっていて、たくさん手直しもしてもらって自分と先生と一緒に作り上げることのできたプログラムだったかなと思います」
▼須本
「練習してきたものがほとんど、SP、 フリーともに出せなかったのですごく悔しいです。自分では練習してきたとずっと思っていたんですけど、それがまだ足りなかったのが(今回の結果の)要因だと思います。SPもフリーも悔しさしか残らない大会だったかなと思います。今シーズン練習環境を変えたということもあって、今までに比べて移動や、練習も少しハードになって、けがもあったりスケートがちょっと嫌になった時期もあったんですけど、この1ヶ月、西日本(選手権)が終わってからは、集中を切らさず練習してきたので、また来年、今年以上に頑張りたいなと思います。今、SP、フリー終わって得たものはないかなと自分では思っています。練習環境を変えて、練習時間の丸々1枠集中を切らさず練習できるようになったのは、関大にきて自分にとってプラスにはなっているんですけど、やっぱり今シーズン、ブロックからこの全日本まで納得のいく演技が1回もできなかったので、来年、1から頑張り直して、武史先生(=本田武史コーチ)にいい演技ができたなと言ってもらえるように練習していきたいなと思います」
▼本田
「改めて、昨日が奇跡だったのだなという感じです。今日のは僕の本当の実力だったんですけど、幸運なことに後半グループで滑らせてもらって、ミスありまくりで伝えたいものが伝えられていたか分からないですけど、でも最後まで気持ちは切らさなかったつもりです。昨日のも僕の限界ですし今日のは今日ので僕の今の限界かなと思います。まずは自分が昨日良い演技をできたというのもあったりいろんなことが重なって、今の自分の実力からはかけ離れた後半グループで滑らせてもらえて、後半グループ独特の空気も相まって何とか今日もいい演技ができたりしないかなと思ったんですけど、さすがに2日連続で奇跡は起こらなかったです。もう少しいい演技ができるかなという自分への期待もあったけど、今日ですら普段の練習より良かったかなというくらい最近練習でも全然だめで、それでも最後まで滑れたのは、お客さんが最後まで応援してくださいましたし、リンクサイドの吉野コーチ(=吉野晃平コーチ)も最後まで応援してくれて、全く体は動かなかったんですけど、気持ちだけは切らさないようにと思って、最後はジャンプとかではなくてこの空気を味わいたいなと思いました。あとから見たら、何でこんなに失敗してるのに笑っとんねんって思われるかもしれないですけど、でもこれが今の僕の気持ちです。今シーズンたぶん、最初で最後の観客ありの試合で滑らせていただいて、実力以上のものが出たし、引退して社会人になっても、昨日の演技は一生忘れないと思います。(他の仲間について)特に友野一希(同大)は小さい頃から一緒にやってきて、昨日一希がサルコーを失敗したのが信じられないくらい調子がいいのも知っていましたし、今日一希がいい演技をしてくれると信じているんですけど、一希は西日本選手権、11月の頭が終わったくらいから僕の引退を意識し始めたのかよく連絡が来るようになり、目指している後から違うんですけど、でも昨日の僕の演技もあとから見てくれたみたいです。ジュニアの頃は同じレベルで切磋琢磨(せっさたくま)していたからちょっと悔しいですけど、でも最後はいい所を見せられたかなと思います。大学4年生という一応最上級生なんですけど、全然先輩たちに頼ってばかりで情けないですけど、本当に両親とかコーチとかファンの方々に加えて、一緒にやってきた男子スケーター、そして同期のスケーターはずっと自分の支えになっていました。あと残り少ないスケート人生ですけど、もうちょっとだけ一緒に頑張っていけたらなと思います。(妹たちに残したもの)いろいろ残したつもりなんですけど、それが伝わっているか分からないですし、自分で言うことではないので受け取る側が感じ取って欲しいですけど、でも昨日と今日の、2日間の僕の演技が全てだったと思います」
▼三宅
「滑り終わって、ジャンプのミスはたくさんあって、思うような完璧な演技はできなかったですし、流れも悪くなってしまった部分はあったんですけど、それでもスケーティングの部分は自分の中で落ち着いてできて、今までで一番良かったのかなと思います。点数的にもあれだけミスがあった中で自己ベストの点数を出していただけて、本当に良かったという気持ちです。去年は(全日本選手権に)出られなかったから、初めて出る試合みたいなワクワクした気持ちでSPもフリーも臨めたので良かったかなと思います。前までは、ジャンプにすごく集中してた部分があったんですけど、今はスケーティングの部分も、歌子先生(=長光歌子コーチ)とすごく練習してきて、自分の中で武器というか、自信がついてきたので、そこを見せようという気持ちがあったので、ジャンプのミスがあっても次の要素、スケーティングを頑張ろうという気持ちになれたので、すごく練習してきた成果が出たのかなと思ってうれしかったです。来シーズンはシニアに上がりますし、今回僕はジュニアからの派遣していただいて出てるので、まだ覚悟が足りないのかもしれないんですけど、来年も今年みたいに楽しんで滑れるように、とりあえず自分のスケートが見せたいという気持ちで臨めるように頑張っていきたいです。(スピンに関して)去年の末くらいからずっとスピンの練習は頑張っていて、曲の通し練習の中でしんどいときとかうまくいかなくて悔しいときもあるんですけど、それでも、他を失敗してもスピンは頑張ろうと練習してきたので、それが良かったのかなと思います。世界ジュニア(選手権)も中止になりましたし、B級の派遣の大会も派遣があるかわからないから、僕は今回の大会で今シーズン最後だったので、来シーズンに入るまでに時間がたくさんあるから、トレーニングであったりとか、自分がシーズン中にできなかったやりたいことをたくさんやって、シーズンに臨めたらと思っています」
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