私はこの春、関大スポーツ編集局(カンスポ)という学生記者の世界に足を踏み入れた。中学・高校と陸上競技一筋で取り組んできた私にとって、大きな決断だ。だが、この判断が間違っていたとは感じない。週末に選手たちが懸命に戦う姿をカメラに収め、記事にする。特段、こだわりの競技がない分、取材に行くたびにその競技が好きになっていった。こうしてカンスポに入部して8カ月の月日が経った今、コラムを書くことに。内容を決めるまでにずいぶんと時間がかかり、当初は「私の決意」と題し、選手から記者に移り変わった思いをつづろうと考えた。しかし、学生記者の立場としてコラムを書く機会がある。そこで私自身のことではなく、この半年活動してきた中で考えた役割を3つつづりたい。
結果の裏側
カンスポには大きく分けて2つの役割がある。1つ目は日々の取材。体育会全クラブの試合速報。試合後には結果を記事にする。2つ目は年6回の新聞作成だ。2週間で真っ白な紙面から作り上げていく。新聞を読めば、体育会の様々な情報が一目でわかるものとなっているので一度、手に取って読んでほしい。これらが主にカンスポのホームページやクラブ紹介に掲載されている内容だ。この2つの役割に加え、次の3つも大事だと考える。まず最初は結果には見えない側面を伝えること。ほとんどの競技は、試合が終わると必ず勝敗が結果とともに伝わる。例えばバスケットボールの試合でAチームとBチームが試合を行ったとしよう。A60-57Bで試合が終了すると、3点差でAが勝ったという結果だけしか見た人には伝わらない。だが、数字だけでは試合の全てを語ることはできず、「結果」の裏にあるドラマが大切だ。こう考えるようになったのは13年ぶりに劇的勝利で優勝を収めたアメリカンフットボール部の試合を見たからである。2023秋季関西学生リーグDiv.1第7節。関学大に勝てば13年ぶりの優勝が決まる運命の一戦。会場には多くの観客が集まった。序盤は互いに差が開かないが相手はフィールドゴールでじわじわと点差をつける。第4Qまで進んでも一進一退の攻防が続く。関学大にリードされていた関大だが47ヤード(42.9㍍)の地点からキックし逆転。この攻めた3点で関大は勝つことができた。なぜ、カンスポが試合会場に向かい、取材をするのか。その答えは「結果」だけでは語れない試合の魅力を伝えるためだと感じた。
両方の立場
次の役割は両方の立場を経験させてくれることだ。両方の立場とは選手を支える立場とカンスポの活動を支えてくれる役割のことを考えている。「カンスポは選手を支える立場である。活動をするには、新聞製作であれば業者の方などの協力がなければ作れない。また、取材を引き受けてくれる選手や、試合の取材ができる環境にあるからこそ成り立っている。一人ではできない活動だからこそ感謝を忘れないようにしてほしい」。これは来年に向けての面談の時、次期編集長の稲垣寛太(商2)が語った言葉だ。この経験こそ唯一無二の役割だと思う。選手の立場であると周りの方々から支えられていると実感することは多い。しかし、競技を通して誰かを支えていると感じることは少ないだろう。この2つを活動の中で経験させてくれることは、選手を支える立場であるからこそ痛感することだ。
思いを繋ぐ
3つ目は思いをつなぐことだ。この思いとはKAISERSが試合を通し、届けてくれる活力のことで試合を見に来た観客はもちろん、私たちカンスポもエネルギーをもらう。選手たちは試合で気迫のプレイを見せ、感動を届ける。そこに詰まった選手一人一人の思いや、二度と見ることができないドラマをWEB記事や新聞を通じて読者につなぐ。そして、記事などを読んだ方々がKAISERSを応援し、体育会全体がひとつとなり盛り上がる。この循環が続き、まるで何年もの時を経て受け継がれてきたたすきができていく。そのたすきを止めることなく日々、つなぎ続けることこそがカンスポが活動する役割だと考えた。
記者として
来年からは合気道、アーチェリー部の班長に。正直、これら3つのことを体現できているかと自分の心に聞くと、自信は持てない。だが、私には唯一無二の強みがある。それはカンスポ、そしてKAISERSが大好きだという点だ。取材ではなくても選手が戦う姿を見るために足を運ぶ。何事にも続けるとなれば好きでなければ続けられない。その点で「好き」だということは強みだと思う。しかし、好きなだけで活動が務まるほど甘い世界ではない。選手の思いを届ける記事、その様子を伝える写真。選手ではないが、同じ体育会として活動している。遊び半分の気持ちで取り組むわけにはいかない。「KAISERSが好き」という強み以外に、自分にしかできないものを身に付け、カンスポ部員の一人としてさらなる高みを目指す。【木村遥太】
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