12月28日、午後9時。私は青森県八戸市のホテルでこのコラムを書いている。なぜ私が八戸にいるかというと、アイスホッケー部の日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)取材のためだ。6年ぶりのベスト4入りを果たした今大会。準決勝では東洋大に敗れ、残すは3位決定戦のみとなった。このコラムも「インカレ取材が終わったら書こう」と呑気に構えていたら、いつのまにか自分が投稿する番に。コラムの内容について、少しずつ考えてはいたものの、今の私の脳内はアイスホッケー部でいっぱいである。
25日早朝。始発から2本目の電車に乗り家を出る。電車、飛行機、そしてバスを乗り継ぎ、片道10時間半の道のりの末、八戸に到着。最後は電車に1時間半揺られ、疲れ切っていた。しかし、試合会場に着き、KAISERSの姿を見ると、その疲労感は吹き飛ぶ。関大スポーツ編集局の部員たちは、それぞれ担当競技を抱えているが、記者である前にその部のファン。だいたいみんなこんな習性をしている。
1・2回戦と順調に勝利し、迎えた27日の準々決勝。ここで勝てば17年以来の4強入り、負ければベスト8で今季終戦となる。記事には客観的事実を書いたので、ここでは少し主観的な表現でこの試合に触れてみたい。試合開始直後から、激しい試合展開。1・2回戦とは明らかに相手のレベルが違いすぎた。少しでもパスが乱れれば、すぐにパックを奪われる。しかし少ないチャンスをものにし、何度か敵陣へ攻め込む場面も。惜しいプレーが何度もあり、客席の応援団とともに何度ため息をついたか分からない。
第2ピリオド(P)最後に先制を許し、迎えた最終第3P。ここで関大の得点力が爆発した。チャンスの度に、客席から悲鳴のような歓声が上がる。関西絶対王者の姿が確かにそこにあった。このP4得点で、華麗な逆転劇を演じ、念願のベスト4入りをかなえたのである。
試合が終われば、記事を書かなくてはいけない。「どのような表現をすれば、試合を見られなかった人にも伝わるのだろうか」。これは記者としての永遠のテーマだ。選手それぞれの気迫がこもったプレーに、得点した時の弾ける笑顔。客席の熱狂ぶりをどう伝えればいいのか。アイスホッケーだけじゃない。他の担当競技も同じである。器械体操、ゴルフ、バレーボール女子の選手たちのドラマを、どう表現すればいいのだろう。
私が取材をする上で、1つだけ決めていることがある。それは「選手と一緒に喜ばないこと」。もちろん脳内では大声を張り上げて応援しているし、逆転した時にはうれしさのあまり騒ぎたい気持ちでいっぱいである。でもそれは記者の仕事ではない。自分にできることはシャッターを切り続けること。瞬間の選手の表情を切り取り、それを記事やSNSに載せることによって、少しは試合の雰囲気を読者の皆様に届けられるのではないか。「いや、応援してるなら一緒に喜びなよ」と思うかもしれないが、これが私の美学である。
もちろん今回のインカレ取材でも、選手にカメラを向け続けている。なぜか調子が悪く、頻繁に強制シャットダウンを起こすカメラ。まったく写真が撮れない時間もあり、ヒヤヒヤしながら試合を見つめた。この1週間、アイスホッケー部の躍進によって、4日連続で記事を書いている。そろそろ疲れてきた。担当記者としてはうれしい悲鳴だ。それでもあす、また試合会場に行けばそんなことは忘れるのだろう。記者として、そしてファンとして。KAISERSの輝く姿を自分なりの表現で届けたい。【島田采奈】
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