「やり切った」と心の底から思えなかった。中学生の頃に見た書道パフォーマンスに惹かれ、こんなふうに心に響くものを届けたいと高校では書道部に入部。しかし、コロナ禍だったこともあり、外部で披露する予定はすべて中止に。校内で発表する機会はあったものの、決して多い観客数とは言えず、達成感を感じられないまま高校生活は幕を閉じた。
大学こそ何かに全力で打ち込もうと思い、夢中になれそうな部活動やサークルを探してみる。関西大学のホームページをのぞいた時、ふと目に入ったのは「関大スポーツ編集局」(カンスポ)という部活動。今まで知らなかったその存在に釘付けになった。スポーツを見ること、文章を書くことが好きだった上に、カメラにも興味が湧いていた私。写真も、記事も、全て自分たちで作り上げられるということにわくわくが強まる。さらに、新歓で話を聞いた際の「カンスポに入って本当に良かった」、「しんどいけど毎日は充実している」という言葉や、体験取材で感じた活動への熱量。目の前で繰り広げられる大学スポーツのすごさにも圧倒され、ここしかないと入部を決めた。
様々な競技の試合におもむき、多くの場面を写真に収める。行ったことのない場所にもたくさん行き、次はどんな瞬間に出会えるのかと取材に行くことが楽しみだった。しかし、秋になって担当班が決まるとこれまで以上に取材が増え始める。土日連続で朝早くから夜遅くまで取材を行い、平日にはWEB記事の執筆や週間プレイバックの作成を行う。そんな日々を繰り返す中、撮った写真や書いた記事がKAISERSの役に立てているのか。誰かの心に届けられているのか。そう思い悩む時間が増えた。
そんな思いを抱えながら行ったある取材の帰り道。「今日は来てくれてありがとう。カンスポさんが来てくれる日はみんないつもよりも気合いが入ります」。偶然会った選手の方から声をかけてもらえた。その時に気づいた。「ちゃんと力になれていたんだ」と。思いを込めたものが届くことのうれしさを実感した。私たちを待ってくれている人たちがいるのなら、どれだけしんどくても、どれだけ大変でも、今よりいいものを届けたい。たくさんの感動や素晴らしい試合を見せてもらっているのだからお返しがしたい。私が書く記事や撮る写真が選手の原動力になれば。その思いがますます強くなった。
来年からは班長としての活動も増えていく。これまでよりもその競技の取材にかける時間が増える分、さらに選手に寄り添った記事を書きたい。企画や号外も作り、その活躍や思いをもっと多くの人に知ってほしい。カンスポを待ってくれている人たちへ、心を動かすような最高のものを届け続られるように。揺らぐことのないこの思いを胸に、これからも私は取材へ駆け出す。【中吉由奈】
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