兄や姉に憧れて、その背中を追いかけるように練習を頑張る。よくあるスポーツ漫画の展開だ。しかし私の場合は反対だった。中高6年間、ずっと妹に追いつくために必死。自分なりに立てていた「〇秒を出す」という目標もいつしか、「妹を抜かす」という、ただ姉としてのプライドを傷つけられ、悔しさに身を任せたような適当な目標に変わっていた。
私は中学生になって、部活動に加えて外部の陸上クラブに所属し始めた時に妹も陸上を始めた。元々足が速かった妹は、小学生にして、全国大会に出場。その経験がきっかけとなり、中学校は私の通っていた地元の公立ではなく、陸上の強豪校で有名な私立中学に通い始めた。中学生になってから、妹のタイムは爆発的に伸び、いくつもの大会新記録を樹立。全国大会に出場し、府の代表選手にも選ばれるようになった。姉の私としては、妹の活躍する姿を見るのがうれしいという気持ちが3割。残りの7割は、妹に負けているという悔しさが占めていた。
しかし、なんだかんだ言っても妹は憧れの選手だ。姉妹という関係が邪魔をして素直になれなかったが、堂々と走る姿に何度となく「あんな選手になりたい」と思った。いつしか私の目標は「妹と一緒にリレーを走る」に。この目標はチームメイトの「全国大会に出場する」とか「〇秒を出す」といった目標と比べると、簡単に達成出来る目標だったと思う。さらに妹とは2歳差。一緒にリレーが走れたとしてもそれは数カ月だけだ。それでも私はただ一緒に走るという目標を達成するために、妹のいる学校に進学し、中学の時とは比べ物にならない過酷な練習も頑張った。そして高校3年になり、妹がようやく高校1年になった時に、妹が高校生になるまでの間、練習を頑張ったかいがあり、私が3走、妹が4走でリレーメンバーに選出される。引退までリレーは10回もなかったが、それでも妹と一緒に走ったリレーは私の陸上人生の中で1番輝く思い出で、忘れられないものだ。
結局私の陸上人生で、妹に勝てたことは1度もなかった。陸上を辞めた今でも、悔しいという思いは消えない。しかしそれでも憧れのあの選手と一緒に走ったという事実は私の永遠の誇りだ。周りの人が大きな目標を立てているからといって別に自分も大層な目標を立てる必要はない。自分が今1番何を成し遂げたいのか。それをしっかり見つけて、達成するために自分なりの努力をすること。これが全てのことにおいて大事だと思う。今は大した目標もなく適当に生きている私だが、新たな目標ができれば、目標達成のために真剣に向き合いたい。【長鴫海莉】
わすかずこ
感動のあまり左目から涙が1滴流れました。
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