2年前、直感に導かれて進んだ道には新しい世界が待っていた。
関大スポーツ306号で初めて自分の思いを書いた。悪者を倒す正義のヒーロー、チームを勝利へ導くエースのように、誰もが一度は憧れる「主人公」とは違う、 陰で支える存在の関大スポーツ編集局(カンスポ)。カンスポでの活動は、誰もが想像するキラキラした主人公のような大学生活とは大きく異なっていたが、学生記者という世界でひたすらにKAISERSの活躍を追いかける毎日も輝いていた。正解がない中で自分なりの伝え方を見い出したり、休みなく取材に赴くことは大変だったが、これまでの生活とは一変した新しい世界での毎日は、とても楽しかった。
野球が好きな私は、「甲子園のベンチの横で写真撮れるで」という一言をきっかけに、体験取材をすることもなくカンスポへの入部を決めた。楽しそう、その直感を信じての入部だった。小さい頃からよくスポーツ観戦をしていたが、学生記者としてのスポーツ観戦は見える景色が全く違った。
ただスタンドで試合の勝敗に一喜一憂する観戦とは違い、より選手に近い場所で取材を行うため、冷静さを保つことがなにより重要だった。勝負の世界に必ず存在する歓喜と悲嘆を逃さずにカメラに収め、どんな結果であろうと記事として記録し、新聞として形に残す。毎回同じ作業の繰り返しだが、競技ごと試合ごとにドラマがあり、涙なしには見られない場面もたくさんあった。勝利を追い求めグラウンドを駆ける選手と同じように、カンスポもKAISERSを背負い、自分たちの活動に誇りを持ってやってきた。ドラフト会議に立ち会えたこと、甲子園の記者席へ足を踏み入れたこと、優勝を目の当たりにしたことなど、かけがえのない経験をカンスポはたくさん与えてくれた。
「生きるのがうまい」とこれまでたくさん言われてきた。これは私の特技の1つかもしれない。これまで嫌なことはうまく避けてきたし、どうしても戦わなければいけない時は奇跡的な運で回避してきた。失敗が怖く、自ら何かに挑戦することを避け、誰かが敷いてくれたレールの上を、バランスを崩さないように慎重に歩いてきた。
しかし、この学生生活の3年間は挑戦にあふれていて、自分で考えて実行することばかりだった。2年生の冬、来年に向けて熱く思いを語る同期においていかれそうになった不安から、自ら主務をやると志願したことも、今思えば私にとって大きな挑戦の1つだったのかもしれない。カンスポでの活動を終えてみれば、苦手だった「挑戦すること」に対して、少しは自信が持てている気がした。
主人公のように曲げたくない強い信念も、他人に誇れる何かも持っていないが、いつしかカンスポでの活動は自分を表現できる場所になっていた。それは、私なりの楽しい生活を送れていたから。これからも長く続く人生のうちのたった3年。失敗を恐れず、直感に従って進んだカンスポでの時間は、私にとって誇れる3年間だった。この道に快く送り出し応援してくれた家族、ともに笑い助け合った同期に感謝を伝えたい。そして、あの時直感を信じて一歩踏み出した自分に感謝したい。【石井咲羽】
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