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小さな大差

小さな大差

「あなたにとって『スポーツ』はどんなものですか?」
引退してようやく集中できると思った就職活動でも、常にスポーツが私の周りを取り囲む。当たり前だ。スポーツに関わって生きていきたいのだから。

受験に失敗し、関大に入学。どうしてここに居るんだろうとさえ思ったこともある。だが、私にしては珍しく、すぐにそういう運命だと切り替えた。
「関大でしかできないことをやろう」
そう思ってサークルを探すも、イケイケアレルギーを発症。せめて新しい友達だけでも作りたいと思っていた時、2限目も4限目も偶然前に座ってきた2人に声をかけた。この2人の座席を選ぶ能力と、滅多に発揮されない私のコミュニケーション能力のおかげで、私は関大スポーツ編集局(カンスポ)の門をたたくこととなった。

こうして、割とノリで入部してしまった私だったが、
「神は細部に宿る」
なんとなく覚えていた言葉を、痛いほどに感じたカンスポ人生だった。

2年の時のゴルフ部の秋リーグ。ボールがカップに届かず、部員はうなだれた。その後のミーティング。
「あの時入れていたら」と1打に泣いた。
だってあの1打が入っていれば、34年ぶりの全国出場だったのだから。広大な自然の中で、最終的にカップに入ればいいという単純な競技。それでも、0.01㍉のずれ、0.01秒のずれ、人間には分からないようなほんのわずかな力の差、そのすべてが命運を分ける。何かが違えば、違う結果になったかもしれない。その「小さな大差」を感じた。
その次の春、ゴルフ部は1打に笑った。小さな大差をものにしたのだ。
この小さな大きさには、他の競技においてもいい意味でも悪い意味でも泣かされた。今秋の野球部は1点に泣いたことも、喜んだこともあった。ホッケー部も、残り数秒で同点に追いついたこともあった。「あの時あと1点入っていれば」。「あの時あと1本パスがつながっていれば」。そのすべて、細部に神がいた。

細部に泣かされるのは選手だけではない。カンスポのメインイベント、新聞の編集。多くの文字が刻まれまくっているあの紙に、私たちは2週間全力投球する。コンシンの記事や表を提出し、意見を言い合い、ぶつかり合い、何度もやり直す。文章の誤字・脱字、表のずれ。これがまあしんどかった。表に関しては、1㍉より小さなずれを直す。そうしていると時間がなくなり、ついに妥協。できた新聞を見ると、ため息がでる。「やっぱりちょっと寄ってる」。誰が気にすんねんみたいなずれのせいで、その新聞がまるで不良品のように見える。2週間、いろんなものを犠牲にした集大成が不良品。最悪だ。

取材でももちろん感じた。最高の瞬間を見せてくれても、撮れた写真を見て幻滅。「なんで切れてるん」。喜びすぎて選手がジャンプすると、大事な表情が写らなくなってしまう。「あの時もう少し引いていれば」と後悔。なんなら、自分のポジショニングまで悔いてしまう。「もう1歩横にずれていれば」。構図だけでなく、明るさ、ピント、シャッタースピード、そのすべてが完璧でないと、人の心を動かすような写真が撮れない。

選手が1秒、1打、1点に懸けるように、カンスポは1枚、1文、1㍉に命を吹き込まなければならない。そのすべての細部に神が宿ると信じ、こだわるしかないのだ。いや、神がいるのではなく、こだわれば後悔がなくなるからこそ、自信をもてるのかもしれない。

そういうことで家の細部まできれいに大掃除します。良いお年を。【上田紫央里】

△ ゴルフ部
一番お世話になりました。担当し始めた時は2部。それでも今年は、全国でも取材させてもらえて、快進撃をずっと見れて幸せでした。感謝しかありません。1部昇格の記事を書かなかったことがカンスポ人生最大の後悔です。引退して暇になるので、ラウンドのお誘いお待ちしております(笑)
△ホッケー部
担当して2年間。リーグ戦全試合を取材して、いろんなドラマを見せていただきました。喜んでいる写真を撮るためなら、どんな遠くの会場でも苦じゃなかったです。致死量のキラキラをいただきました。ありがとうございました!
△野球部
大好きな野球の取材は毎回夢のようでした。何度も泣きながらシャッターを切りました。夢がかなう瞬間も、敗れる瞬間も、すべての瞬間がまぶしかったです。神宮に連れて行っていただいたことは、私の人生の誇りです。ありがとうございました。来年は観客席からお世話になります!

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