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思わぬ壁と思わぬ出逢い

思わぬ壁と思わぬ出逢い

3年間のブランク

異性。

それは私にとって縁のないものだと思っていた。高校3年生までは。

私は高校で新聞部に所属し、約100人をまとめた部長として活動。全国総合文化祭に出場するなど、部活動を通して濃密な男子校での3年間を送った。

これらが報道関係に携わりたいというきっかけとなり、関大スポーツ編集局(カンスポ)に足を踏み入れた。「自分の作った新聞を見てほしい!」そんな期待を膨らませていたが、私が直面した大きな壁は『異性との関わり方』だった。

「3年間異性と関わらない年があっても自分の人生に関係ないし、大学に入っても話せるでしょ」

高校時代はそんなことを思っていたが、同期の異性と関わらなかったブランクは大きかった。

理系ということもあり、講義や実験では男子に囲まれ、部活では女子に囲まれながらパソコンで編集を行う。私が活動する上での男女比率は明らかに極端だった。同性との会話のコミュニケーションは昔から滞りなく行っているので問題ないが、異性となると緊張してしまう。発した一言一言に対して、

「今の発言、大丈夫だった?」
「この人こんなこと言っているけど、本当は違うんじゃないか?
もっと違う言い方があったのでは?」


と考えてしまうほどになっていた。もちろん、そんなことを考えても人の心の中をのぞくことができない限り、無意味だということは分かっている。それでも、考えてしまう。男性は名前で呼べるのに、女性を前にすると、同期後輩に関わらずみんなに「さん」を付けてしまう。同期で唯一の男性である荒川拓輝(経3)は部員みんなにちゃん付けやあだ名呼び。最初は驚きを隠せなかったが、今となっては彼のコミュニケーション能力の高さに嫉妬までも覚える。部の中でも自分の固定概念に縛られた影響で孤立していた。また、部室から帰宅しても明かりをつけず、しばらくベットの片隅で泣き崩れるほど異性とのコミュニケーションに悩んだ。

出逢いの中で

私がカンスポとして紙面を作成したいという思いは強くあったが、予期せぬところでつまずいた。正直、今の環境が私に不向きであり、やりたいことを蹴ってでもカンスポを退部したい。むしろ、本来は学業などで多忙なことから退部すべきなのではないか。そう思ったことが何度もあった。しかし、その迷いの中で出会った存在が、深夜にたまたま視聴したアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』だった。

『スクールアイドル同好会』に所属する12人のメンバー一人一人がNо.1スクールアイドル(全国各地の学校内で結成されたアイドルグループのこと)を目指しながら、時には仲間、時にはライバルとして、日々活動する日常が描かれているアニメ。自分が Nо .1のスクールアイドルになりたいものの、それぞれのキャラクターに閉ざされた事情や困難を抱えている状況は、やりたいことがあっても、慣れない環境に包まれている私と似ていた。それらの困難を彼女達自身で解決、きずなを深めていくストーリー。それらを乗り越え、後半で流れるMVでの彼女たちの笑顔を見て、

「自分のこの困難を乗り越えた先にはきっと明るい未来、やりたいことができる未来が待っている」

と自分に言い聞かせ、12人のスクールアイドルから勇気をもらった。

大学2年生になると、常に組織の核であった木原綺音(文3)の存在が私の『異性とのコミュニケーション問題』に大きく関与した。誰にでも気さくに話しかける木原さん。部の中でも静かで、話しかけづらいであろう私に「おーちゃん」と親しく話しかけ、明るくふるまってくれたことは今でも忘れない。303号で中面を一緒に作成した時も、中面のことを優しく、詳しく教えてくれた。木原さんがいたからこそ、少しずつほかの人とも話すことができるようになったのだと思う。

ここでいうのもなんだが、カンスポのメンバーが嫌いということではない。思想のベクトルが違う同期8人とかわいい後輩たちだ。部室では取材で撮影した写真を見て、

「この選手かっこいい!」
「この人かわいい!」

などとはしゃぐ部員。その姿はいつもキラキラとときめいていた。

3年生になり、異性と何度も会話を交わすことで、『私が直面した大きな壁』は少しずつなくなっていった。ここまで至るのに本当に長い時間をかけてしまった。それでも、今ではある程度異性とも会話ができるようになったり、私がやりたい「紙面作成」は実行することができた。

私が印象に残っている部での出来事は、新聞の作成をする編集期間と出来上がった新聞を購読者に配送する作業の日だ。私は編集が好きだったのであまり感じなかったが、この編集が苦手という部員は多くいた。編集期間中に頭を抱え、多くの困難とぶつかった。それでも、みんなと知恵を振りしぼり、なんとか新聞という形にした後、発送作業を迎える。

出来上がったばかりの新聞をきれいに折りたたみ、封筒に入れる部員たち。その多くの人は

「この見出しいいじゃん!」
「写真の明るさ、大丈夫だったね!」
「この表、最後まで頑張ったね!」

とつらかった編集期間も交えて、思い出を振り返るかのように新聞を見ていた。その表情は編集の時とは打って変わり、部室中が笑顔かつ達成感で満ちあふれていた。どんなに苦しいことでも、その先にあるものを味わうために全員で困難を乗り越える。これも私がカンスポで学んだ1つであり、私の次の新聞を作成する原動力になっていたのかもしれない。 あの時、カンスポを辞めずここまで続けることができて、本当に良かったと心の底から思っている。

―Go for dream 何度でも 夢を…夢を… 追いかけていこう!―

「Future Parade」/虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

これは私が好きな歌詞である。これからも、やりたいことができないという場面に直面するかもしない。それでも、夢を追いかけ、その先にしかない笑顔や光のために、どんな困難にも立ち向かいたい。カンスポのメンバーや12人のスクールアイドルたちとともに乗り越えたように。【島田桜介】

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