◇ 第60回全国武徳祭 ◇4月29日◇旧武徳殿◇
武道を極める者が集う全国武徳祭。古武道以外の演武も行われる。関大古武道部からは梶山大誌主将(シス理4)、松徳武吉(法4)が出場。個人、団体共に特別賞を受賞した。両者とも、日頃の稽古の成果を出し切り満足のいく表情を見せた。
梶山主将は昨年の連盟大会でも行った徳嶺の棍(とくみねのこん)を披露。この演武では棒を扱い、架空の敵を想像。目の前にいる相手に対して、棒の長いリーチを生かして対処する。「今までやった演武の中で一番仕上がりがよかった」。表現したかったことを出し切り、納得の表情を見せた。「(関大古武道部は)新入生が例年より多く入ってくれて、盛り上がりを見せている」。古武道を次世代につなげる責任を果たす。
今回の武徳祭が学生として最後の大会となった松徳は阿南君(あーなんこう)を披露。琉球古武術の釵(さい)を使用した。緊張したと語るものの、「何も意識しなくても体が勝手に動いてしまう。そこまで完璧に鍛え上げた」と流石の演武を見せる。これまでの集大成として自分の演武に合格点を与えた。大学卒業後は関大古武道部の神月円心流から新たな流派へと挑戦する松徳。現在持つ黒帯から白帯に戻り、新たなスタートを切る。
他の演武者を見て、「全てにおいて違ったのでいい刺激を受けました」と梶山主将。扱ったことのない二丁鎌や三節棍(さんせつこん)のようや新たな武器にも出会った。今後はこのような武器も少しずつ取り入れたいと語る。関大古武道部は新たな試みにも進んでいく。【文/写真:荒川拓輝】

▼梶山主将
「(試合を終えて)この1年間の古武道の行事で見ると、武徳祭は一番大きいイベントですし、その分気合も入りました。準備においても、日頃やってきたことを出すだけですが、気持ちの面から違いました。(どういう大会か)大学生がメインではなく、一般の道場の先生方が日頃の鍛錬の成果を見せにくる場です。古武道だけでなく、居合や空手などの演武も見て、いい刺激になりました。(会場の雰囲気は)旧武徳殿という国の有形文化財になっているところです。建物も明治頃からあるもので、雰囲気はとてもありました。(観客は)観客は入れませんでしたが、うちの部活の後輩と他の道場の出ている師範の方などの限られた中でした。(緊張はしたか)もちろん緊張もしました。会場の雰囲気もすごいものがありました。プログラムを見ていても、8段だったり師範だったり格が違いました。舞台に上がったときに目の前に主催の方が見ていました。その方を見るとグッと緊張しました。(見ている方に古武道のよさは伝えられたか)終わってから交流する時間がありました。何人かの方からは声をかけて頂きました。師範の方だと年齢層も高いです。そのため若い人がいると珍しいので声をかけて頂きました。(演武を振り返って)前回と同じ型をさせて頂きました。今までやった演武の中で一番仕上がりがよかったです。やりたいことが出せて、表現したいことは表現できました。(徳嶺の棍(とくみねのこん)は何を表現しているか)架空の敵を想定しています。その敵が攻撃したら防御をするし、攻撃もする。ときには相手を引っ掛けたり、転かしたり、武器を絡めとったり、リーチを生かした攻撃を主体とした型です。対人を想定していますが人に見せることも意識しています。足音だったり気合いだったりも表現の点でもこだわりを持っていました。(周りの人からの好評は)後輩からは上手にできていましたねと言ってもらえました。流派も違えば同じ型をやっていても動作が違っていたりします。(頂いた賞について)自分と松徳先輩はそれぞれ個人に特別賞を頂きました。関西大学古武道部という団体では招待団体という枠で出さしてもらい、特別賞を頂きました。コロナ禍の中、日頃、技を磨いてその場に出たということで賞を頂けて非常に光栄です。(他の演武を見て)居合とかは自分の専門外です。同じ太刀ですが真剣を使うと演武は全然違います。同じ古武道でも自分達が扱わないにちょうがまなどの武器もありました。棒の使い方が違ったり、着るものが違ったり、全てにおいて違ったのでいい刺激を受けました。後輩も三節棍(さんせつこん)がカッコいいと言っていました。本格的に取り入れるというかは、自主練の時間を使って武器を新しく開拓してみようかなと思いました。(今後に向けて)新入生は例年より多く入ってくれました。盛り上がりを見せている状況です。今までの伝統を断たずに次の世代につなげていけたらなと思います」
▼松徳
「(試合を終えて)自分としては大学5年目で最後の武徳祭でした。自分は緊張すると頭が真っ白になります。その中でも型を間違えずにやり切ったことは自分の中で及第点に入ると思います。去年と一昨年はコロナでなくなっていたので3年ぶりの開催となりました。(5年生ということは本来なら出る予定ではなかった?)出るうれしさはありました。他の団体の型を見ることで動きの理屈を理解できるようになりました。(会場について)武徳殿というのは格式が高いところです。学生招待という形でしたが参加することができて、いい経験になりました。(演武を振り返って)基本的に他人に見せる演武は本番を意識してやっていて、平時と変わらないつもりでやっています。特に何も言うことはないです。(緊張はしたか)ただ単に半機械的に動いているというか、何も意識しなくても体が勝手に動いてしまう。そこまでに完璧に鍛え上げる。もし、危機的な状況に陥ったとしても真っ白な状態から体が動くのが武道の強みです。(武器は何を使ったか)自分は琉球古武術のさいという武器を使わせて頂きました。(去年の連盟大会とは違う型か)連盟大会でやったのは対人の型です。今時、武器の打ち合いで演武をするのは珍しいと思います。武徳祭でも武器同士で打ち合うのは少数派でした。(頂いた賞について)古武道というのは試合で残した結果ではなく、そこに行き着くまでの過程を評価してもらうものです。そこが一般的なスポーツと古武道の差だと思います。(他の演武者を見ての感想は)まだまだ自分の知らない型や流派があります。大学を卒業してからは新しく社会に出ますが、関大の神月円心流から新しい流派にチャレンジしていきたいと思います」
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