リーグ王者大体大にPK戦敗れ、総理大臣杯出場叶わず

◇第50回関西学生選手権大会準々決勝◇対大体大◇7月18日◇J-GREEN堺メインフィールド
【前半】関大0―1大体大
【後半】関大1―0大体大
【延長前半】関大0―0大体大
【延長後半】関大0―0大体大
【PK戦】関大2―4大体大
2019年に3位入賞を果たした総理大臣杯。出場まではあと一歩のところだった。前半44分に失点してしまい苦しい時間が続いたが、後半36分にFW百田真登(経2)が意地の同点弾で試合を振り出しに戻す。その後は延長戦までもつれ込む接戦を繰り広げ、勝敗はPK戦にゆだねられた。だが、GK光藤諒也(文4)が好セーブを見せるも一歩及ばず。悔しい敗戦となった。

前半から一進一退の攻防となるが、相手のチャンスは守備陣が奮闘し、サイドからの攻めを中心に攻撃を組み立てる。16分には、MF足立翼(人3)が得意のドリブルで相手のファールを誘う。さらに23分、DF髙橋直也(商2)のロングフィードからFW宮脇和輝(情4)が抜け出しの動きを見せる。その後はつながらなかったが、積極的な姿勢を見せつけた。



MF平松巧輝(情3)の中盤でのパスカットや、DF吉田伸弘主将(法4)とDF次木優斗(商4)の対人守備で粘り強さを見せる関大。だが、前半の終盤から自陣でのプレーが続く。そして43分、右サイドに人数をかけ、守備に徹するが、中央へのボールに対応できず失点。苦しい展開となるが、そこに追い打ちをかける事態が起こってしまう。前半のラストプレーでコーナーキックを獲得した関大だが、競り合いの場面で相手GKとDF吉田伸が接触。DF吉田伸が出血する事態となり、ここで前半が終了。ビハインドの場面でキャプテンが負傷交代という状況を強いられてしまった。




なんとか追いつきたい関大だが、キャプテンが交代せざるを得ない不測の状況。そんな中、DF吉田伸に代わるのは、高校からのチームメイトであるDF吉田岳晴(社4)だ。「自分の思いを岳に託してベンチからチームを見守ろうと思った」。親友の思いを背負いピッチに立つと、献身的に体を張り、ピンチを未然に防ぐ固い守備を見せた。


そして8分にはFW沼田駿也(政策4)がついに登場。投入直後から積極的に相手の裏を狙い続け、オフサイドになる場面もあるが、圧倒的な存在感を発揮する。MF堤奏一郎(商2)との連携や、GK光藤からのロングボールでも相手に油断を許さない。試合のペースを関大に傾けた。



攻撃の流れはつかんだものの、待望の得点へはつながらない。あと少しのところで決まらないもどかしさが続くも、この場面で見せたのがFW百田だ。36分、MF深澤佑太(社3)が相手DFに寄せられながらも見事なボールキープを見せ、FW百田につなぐ。そこから落ち着いてゴールに押し込み同点に追いつく。リーグ戦第1節振りに値千金の得点を挙げた。





その後も関大がチャンスを作る展開が続く。MF草刈隆星(法4)が中盤でパスを回し、終盤の苦しい場面でもDF浅羽悠成(安全4)がゴール前での安定感を見せる。だが、少ない時間での逆転は叶わず、延長戦へと持ち込まれた。


10分ハーフで行われる延長戦。開始1分のところでFW沼田がボールを一気に前線へ運ぶ。クロスを上げ、こぼれ球にはMF前田龍大(人1)が反応。CKを獲得した。ゲームの流れは依然関大のもの。だが、延長前半でスコアは動かないまま後半へ突入。MF梅津克貴(社4)の体をうまく使った守備からの攻撃や、MF深澤の相手の股を抜くシュートなど、チャンスは訪れるものの得点へは至らない。勝負の行方は運命のPK戦へとゆだねられた。


準々決勝の4試合すべてでPK戦が行われるという異例の事態。会場は緊迫した雰囲気に包まれた。先行は大体大。落ち着いて決められると、関大1人目のMF深澤のボールは相手GKにセーブされてしまう。出鼻をくじかれ、重い空気となるかと思われたが、GK光藤が続くシュートを完璧にセーブ。ここぞの場面で勝負強さを見せつけた。DF浅羽、DF次木とシュートを沈め2―2で迎えた4回目。相手はコースを狙ったシュートを成功させると、DF髙橋のボールは相手にコースを読まれてしまい、セーブされる。そのまま大体大は5人目も決め、ここで試合終了。GKへと駆け寄る相手とは対照に、関大の選手はピッチにうなだれ悔し涙を呑んだ。



2大会連続での総理大臣杯出場とはならなかった関大。だが、「全員サッカーで日本一」の目標が絶たれたわけではない。「インカレへ向けてやることがはっきりした」とDF吉田伸主将。現在の順位が良くないからこそここからの反撃に期待がかかる。残り一度のチャンス、つかみ取るのは関大だ。【文:宮本晃希/写真:小西菜夕】
▼前田雅文監督
「ゲーム内容に関しては良かったと思う。先制点は取られてしまったけど、ワンチャンスを取られたという感じ。いつもならこのままズルズルといってしまうけど、相手に主導権を握られる感じでもなかった。そこから我慢して得点もできたのは良かった。昨年よりも多くチャンスを演出できたりしているので、今年に関して言えば紙一重のところではあった。5枚交代というところもあって、宮脇、百田、足立、堤のところがアグレッシブに守備に貢献してくれているので相手にボールを持たれる展開は少なくなったと思う。(失点後の展開について)トーナメントということもあり、焦ってしまいそうな場面ではあったけど、実際にやられているのはあそこだけというのも選手は理解していた。焦らずゲームを進められたと思う。(DF吉田伸の負傷交代について)吉田伸は声をかけて統率したり、チームの方向性を作ったりするので、その声がなくなるのはチームにとって痛いところ。でも、入った吉田岳は身体能力的に高くて、体大の選手にチャレンジできていたので、良かったと思う。(FW沼田の投入後について)相手のディフェンダーとキーパーの間にスペースがあったので、そこを沼田が走ってくれた。シュートまであと一息というところではあったけど、あとは決めきるだけだった。(FW百田の得点について)最近ペナルティエリアに入っていったときに1つのチャンスを外すと足が止まっていたりしたけど、この試合は足を動かし続けて押し込もうという姿勢が見えた。そこが何回も続けられたのが得点につながったと思う。(MF深沢のプレーについて)深沢がいることで、チームがスムーズに回る。パスにしてもディフェンスにしても深沢が入ることでうまく回っていると思う。状況判断に優れているので、今チームがどういう状況なのか、何をすべきなのかを分かってくれて、良いパフォーマンスを見せてくれた。(PK戦の前について)PK戦に関して言えば、運もあるとは思う。そこも含めては思い切ってやってくれたらというところで、過度にプレッシャーはかけなかった。外してしまって負けはしたけど、チームに何か足りなかったからこの結果になったのかなと。チャンスを多く作れた試合だったけど、PK戦で一気に勝ちまで持っていかれた。もっと勝負強いチームにしていきたい。(今後に向けて)8月1週目にリーグ戦が再開されるので、この悔しさや、絶対インカレに行くんやという気持ちを持ってトレーニングしたら内容は良くなっていく。この大会で本当に勝ちたいというのが出てきたので、それをリーグ戦にうまくつなげたら結果も付いてくると思う」
▼DF吉田伸主将
「個人としては前半の終わりに負傷してしまって悔しさがある。チームとして苦しい展開の中、追いついてPK戦まで持ち込んでくれたけど決めるチャンスもあったし、細かいところが今日の結果に結びついたと思う。悔しい結果になったが、終わってからもインカレへ向けてやることがはっきりした。チームとして成長できたとは思うけど、悔しい気持ちが大きい。勝ったら総理大臣杯出場で、今年の中で一番の勝負所になるのは試合の前にも言った。何気ないワンプレーで勝負が決まるかもしれないし、PK戦までもつれ込むかもしれないという言葉をかけた結果、みんな集中して取り組めたと思う。相手をリスペクトしながら絶対に勝てるという思いはあったので、自信を持って臨めた。最近は立ち上がりが課題になっていて、今日も立ち上がりで勝負が決まるという思いがあった。前の試合が長引いて試合開始時間がずれたけど、その中でも集中を切らさずに準備できた。(失点シーンについて)右サイドに人数をかけていたけど奪いきれずに抜けられてしまった。課題としている1対1のところで弱さが出た。相手のチャンスはほとんどなかったけど、浅羽選手と自分が体を投げ出して止めに行ったり、光藤選手も体を張って飛び出したけど、相手のシュートの方が速かった。細かいところの差だとは思うけど、あそこを止めるか止められないかで全国大会に行けるかも変わってくる。もし今日が日本一をかけた試合なら、0対1で敗戦ということになったかもしれないし、そういったところも含めて最後まで足を止めないこともやっていきたい。(負傷交代後について)もちろんピッチに立ってチームの勝利に貢献したい気持ちはあった。自分と変わったのが吉田岳晴選手で、高校から競争してきた仲間で親友でもあるので、自分の思いを岳に託してベンチからチームを見守ろうと思った。PK戦は一昨年の大阪市立大戦からなく、この試合に向けてPKの練習は時間を使ってやっていた。光藤選手が1本止めてくれたけど、練習で前田監督から言われていたこともあった。前の試合がPK戦だったこともあり、自分たちもPK戦があるかもしれないということは話していた。でも、チームとして少しの差で負けてしまった。(試合後の声掛けについて)深澤選手には、深澤選手のアシストで百田選手が決めたから、二人がいなければこのPK戦もなかったと話をした。その中で、今のチームを引っ張ってくれているのは深澤選手や、百田選手や、足立選手という1、2、3回生というのも自分たち4回生は分かっている。まだ終わりじゃないという声もかけながら、自分も悔しい気持ちはあるし、もっといい声かけができたのかなとは思いながらも、寄り添って声をかけた。(今後に向けて)リーグ戦は今順位がよくなくて、このままではインカレに出場できない。この関西選手権が進むたびに1回1回の試合にかける準備が良くなっているのをスタッフの方々に言われた。ずっと続くようなリーグ戦でも今日と同じような準備をしないと勝つのは難しいと全員が理解しているし、リーグ戦に勝たないと目標の全員サッカーで日本一を達成できるインカレにも出られないので、やることははっきりした。この夏で総理大臣杯に出場するチームよりももっと成長する」
▼FW百田
「悔しいのが今の一番の気持ち。全員サッカーで日本一という目標がある上で、総理大臣杯に出て、スタートラインに立つのが大切だった。PK戦という形ではあったけど負けてしまったのは悔しい。リーグ戦から課題だった立ち上がりはチームでコミュニケーションを取って改善しながらこの大会に臨んだ。それ以外の戦い方は試合を通じて成長できたところだったので、これからも積み上げていきたい。(ビハインドで迎えた後半について)焦りというところはなかった。失点以外の場面はいい形で守備できていたし、攻撃も最後を合わしていけば点は入るだろうとみんな思っていた。(今回の得点について)関関戦で4得点できたけど、そこからは自分の力不足で得点できていなかった。その中でも監督が使い続けてくれたり、味方が信じてパスを出してくれたので、それに何とか応えたい気持ちがあった。でも、それができていなくて、悔しい気持ちをしていた。大きい試合で同点ゴールを決めれたのはよかったけどそれまでの過程が自分的には不甲斐ない。関関戦のときは自分がゴール前で仕事をすることができていた。でもリーグ戦では、自分が起点になることに意識を振ってしまっていた。今回はゴール前にいることを意識してゴールにつながったので、これからも続けていきたい。(FW沼田の投入後)沼田選手の方が試合も多く一緒にやっているので、特徴を生かせばチームにとって武器になると感じている。自分は沼田選手の特徴を引き出せるようにというところを2トップで組んだ時に意識している。(PK戦について)PK戦で勝負が決まるのはどっちに転んでもおかしくないと思っている。でも、それまでの過程で延長戦でも決定機が前線には多くあったけど、決めきれなかった。後ろがずっと0で守ってくれている間でも前線が1点しか取れなかったのが、チームの負けた原因だと思うので、今後そういうことがないように練習していく。足がつってしまっていて、PKは蹴らなかった。蹴りたい気持ちはあったけど、チームのことを考えてフレッシュな選手たちに譲った。関西選手権はここまで信頼してもらって、フル出場させてもらっていいプレーができたとは思う。でも、全試合で足をつってしまっているのでそこは課題。(今後に向けて)総理大臣杯に出場したチームは、総理大臣杯に向けて高い意識で練習すると思う。自分たちはそれ以上の意識で練習しないと置いていかれるので、そういったところから競争は始まっている。関大は総理大臣杯で変わったなと思われるように練習からやっていきたい」