関大男子全員がフリー進出決めた!
◇第89回全日本フィギュアスケート選手権大会◇12月25日◇ビッグハット◇
[男子ショートプログラム(SP)結果]
8位 三宅星南(情1) 79.09
12位 本田太一(経4) 67.86
15位 須本光希(政策2) 67.15
22位 木科雄登(安全1) 61.38
日本一を決める大舞台全日本選手権がついに開幕。キスアンドクライのコーチと選手の間には透明のパネルがつけられていたり、観客の声援はなく拍手だけでの応援であったりといつもと異なる試合形式の中、今年も熾烈な争いが繰り広げられた。
第1グループには、新星の三宅とラストシーズンの本田が登場。三宅はコーチと手を取り合い、心を落ち着けてからスタート位置へと向かった。曲がかかると、一気にスピードを上げ、流れに乗る。冒頭のトリプルアクセルを鮮やかに着氷すると、会場からは大きな拍手が沸き起こる。その後の3回転ルッツも流れ良く決めると、そのままの勢いでコンビネーションジャンプも成功。柔軟性を生かしたスピンや表情豊かなステップ、華麗なスケーティングで観客を魅了すると、「すごく集中できていて良かった」と演技後は笑顔でガッツポーズ。ミスのない演技を披露した三宅は、79.09の高得点をたたき出し8位につけた。


本田は三宅とハイタッチしてリンクイン。トリプルアクセルの入りを入念に確認し、最後の全日本の舞台へと向かった。男らしい表情で演技をスタートする。最初に組み込んだトリプルアクセルを確実に決めると、会場は大きな拍手に包まれる。その後の、3回転トーループ+3回転トーループ、3回転フリップも成功。ジャンプを1つ決めるたびに、拳を突き上げ喜びをあらわにした。

最後の舞台を噛みしめるように1つ1つの要素を決めていく本田。「辞めるんですけど、ここで失敗したら辞められへんなという気持ちで滑りました」。気迫のこもった滑りに、会場からは手拍子が沸き起こる。コンビネーションスピンで演技を締めくくると、何度も何度も大きくガッツポーズを見せ、フリーへの進出を決めた。試合後は、「本当に今日は満足です。明日は何位でもいいし、何が跳べても何が跳べなくても最後まで思いっきりやらなきゃなんで。笑って終わりたい」と涙を流した。


第3グループにはルーキー・木科が出場した。練習で成功させていたトリプルアクセルは惜しくも転倒。冒頭のミスからの悪い流れを変えることができず、続く3回転ルッツの回転も抜け1回転になってしまう。「すごく悔しいミス」。木科の顔に焦りの色が見え始める。しかし、終盤のコンビネーションジャンプで何とか立て直し、自分のリズムをつかんでいく。音を確実にとらえた繊細なステップシークエンスや細部まで気を使ったスピンでしっかりとカバー。演技終了後は納得のいかない表情を見せ、悔しさをあらわにした。


そして第4グループには昨年から関大をけん引している須本が登場。昨季からの持ち越しのプログラムで挑んだ。序盤からスピードに乗り、迫力のある滑りで一気に観客を引き込む。今季苦戦しているトリプルアクセル。6分間練習では成功していたものの、惜しくも失敗。しかし、そのミスを引きずることなく演技を続けていく。残る2つのジャンプである、3回転フリップ+3回転トーループ、3回転ルッツを軽やかに着氷。冒頭の失敗を忘れさせるような丁寧な滑りで魅せた。しかし、演技後は悔しい表情を浮かべ、「とても悔しいです。NHK杯の分も晴らしたいっていう気持ちがすごくありました」と振り返った。


この日の結果により、4人全員がフリーへと駒を進めた。運命のフリーは今日の17時04分から始まる。それぞれが強い思いをもって挑み、納得のいく演技を見せてくれるに違いない。【文:竹中杏有果/写真:アフロ/JSF】
▼三宅
「あっという間に終わってしまって。自分でも、すごく集中できていて良かったのかなと思います。NHK杯では、フリーでたくさんミスが出てしまって。でも、落ち込むというよりは、頑張ろうっていう気持ちになれたので。すごく良い経験をさせてもらったなと思っています。(この試合で生きてきたのは)やっぱりスケーティングの部分ですね。長光先生(=長光歌子コーチ)に指導していただいて。ジャンプで乱れることがあっても、スケーティングを落ち着いてできれば立て直しもできるし、ジャンプでミスがあったとしても点数が伸びてくるので。そこはすごく意識して練習できたので良かったと思います。(明日は)フリーはとても素敵なプログラムで、好きなんですけど、まだお客さんの前でよい演技ができていないので。パーフェクトな演技ができるかどうかは分からないんですけど、自分の見せたい演技ができたらなと思います」
▼本田
「最後の全日本ということで、いろいろ込み上げてくる気持ちもありました。特に全日本のSPという意味では、ジュニアの頃に派遣していただいていた時は結構良い演技をしていたんですけど、シニアに上がってアクセル(トリプルアクセル)をやり始めてからは、アクセルどころか他もボロボロみたいなことが続いていて、納得のいく演技が3、4年間できていなかったので、冷静に後から見ると点数にも表れているとは思うんですけど、かなり取りこぼしまくりというか、ジャンプ降りただけという感じの演技かもしれないんですけど、本当に今日は満足です。グループの最後っていうのが自分はあまり得意ではなくて、去年も最後の方で結構ボロボロやってしまって。今日はそこらへんも調整しながらやってたんですけど、どうしても今までの失敗を思い出してしまうところがあって、6分間まではポジティブな感情だったんですけど、星南(=三宅)が終わって、自分のアップの時間になった時に少しナーバスな気持ちになりかけました。辞めるんですけど、ここで失敗したら辞められへんなという気持ちで滑りました。(今までで一番印象に残っていることは?)今は、本田武史先生、長光歌子先生、吉野晃平先生という3人の先生に教えてもらっています。それはもちろん感謝なんですけど、それ以外にもたくさんのコーチに指導というか優しくしていただきました。特に2年前に、日本に帰ってきて1人でやっている時に、本当にたくさんのコーチの方々に声をかけてもらいました。その先生たちには、もっとスケーティングちゃんとしなさいとか、スピン頑張れとか言われると思うんですけど、今日のが僕の限界です。本当に満足してしまっている部分が大いにあるんですけど、こんなに大勢のお客さんの前で滑るのは明日が最後なので、なかなかノーミスっていうのは厳しいと思うんですけど、4分間今日と同じくらい今日より気持ちを込めて。今日はSP通過できるか分からないっていうナーバスな気持ちがあったんですけど、明日は何位でもいいし、何が跳べても何が跳べなくても最後まで思いっきりやらなきゃなんで。明日は笑って終わりたいかなと思います。(どういう思いで滑っていたか?)ラストシーズンということを公表していることもあって、例年以上に応援してくださる方が多いと思うんですけど、多くの方が会場に来られないこの状況で、感謝の気持ちを込めて滑るっていうありきたりかもしれないんですけど。自分なりの感謝っていうのを、男らしい滑りだったり。ヤグディン選手のような力強い滑りが魅力だと思っているので、そういう演技を見てもらいたいなと思って滑りました。明日は少し今日とはテイストは違うんですけど、思い描いている演技は近いものがあるので、足がはちきれても最後まで楽しんで滑りたいです」
▼木科
「冒頭のアクセルと、2本目のルッツのパンクっていうのがすごく悔しいミスで、ただただ悔しいっていう感想です。今シーズンは最初の方は、調子が上がらなくて、試合にうまく合わせることができなくて、本当に悩んだシーズンの始まりだったんですけど、西日本選手権から徐々に調子を上げることができました。全日本ジュニア選手権、NHK杯と自分の100%の実力ではないですけど、試合でまずまずな演技をすることができていました。その中で、今回の全日本は完成度を高めて完璧なものを求めていたんですけど、このような結果になってしまってすごく悔しいです。今シーズン無観客の試合からの始まりで、こうして日本の素晴らしい選手たちと一緒に同じ舞台で戦えているっていうことに幸せを感じます。その中でも、自分がどこまでいけるかっていうのを見たかったところです。こういうスタートにはなってしまったんですけど、もし明日のフリーが滑ることができたら、しっかり自分の存在感を見せつけたいなと思います」
▼須本
「アクセル。一番練習してきたジャンプ、練習でも悪くはなかったので、それを失敗してしまって。全体を通して良い演技をしたかったっていう思いがあったので、とても悔しいです。1つジャンプを失敗して心が折れてしまうと、他のジャンプ、スピン、ステップに影響してしまうっていうことは自分で分かっていたので、最後まで集中を切らさずにっていうのを心に思いながら演技を始めました。良かったです。NHK杯はすごく残念で悔しかったんですけど、お客さんがいる試合が今シーズン初めてだったので、NHK杯の分も晴らしたいっていう気持ちがすごくありました。明日のフリーですべて出し切りたいと思います」